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心臓発作時に使う頓(とん)服薬をたんすにしまっていた70代の女性。発作が起きずに命拾い。

常に使えるよう携帯を

薬剤師が保健婦さんと一緒に、薬に対して不安を感じている高齢者の家を訪ね、相談に乗るという、県内のある村の保健事業で見つけた「命拾い」の一例です。
この保健事業は、今のんでいる・使っている薬が何種類もあり不安を感じている方、また、普段から保健婦さんが村民を見守っている健康づくり事業で、薬が原因で問題解決ができていないといった方を対象にしています。もちろん相談者の同意を得ての訪問です。
この七十代の女性の場合、のんでいるすべての薬の保管場所がたんすの引き出しの中でした。
常に使えるよう携帯を 薬剤師「あれ~、心臓いだぐなったら舌のながで使う薬、これもたんすのながさ、しまってらのが」(あらら、心臓が痛くなったら舌の中で使う薬、これもたんすの中にしまっているのですか) 相談者「うんだ」(そうです)
薬剤師「これ散歩だの、買い物だの、家の外さ出る時、必ず持ってねばまいね薬だや。いづ、発作おぎるが、わがねべ」(これは散歩とか、買い物とか、家の外に出る時、必ず持っていなければならない薬なんですよ。いつ発作がおきるがわからないでしょう?)
相談者「うんだが、わ、なも、わがねがったじゃ」(そうですね。私、何も知りませんでした。) 今回、問題になった薬は、狭心症治療薬の硝酸イソソルビドの錠剤です。かかりつけのお医者さんの指示は、狭心症発作時に舌の下で使用することでした。
胸が痛んだり締めつけられるような狭心症発作が起きたり、発作が始まりそうになったらこの薬を舌の下に入れて溶かします。
そして、舌の下に入れてから首まわりを緩め(ネクタイを緩めたり、ワイシャツなどのボタンをはずしたりというように)ベルトも緩めて最低十分くらいはゆったりと座る、というように使う薬です。 高齢者には、「舌の下」というよりは「舌のなが(中)」といったほうが分かりやすいと思います。 またニトログリセリンと同じ使い方と言った方が皆さんには分かりやすいかもしれません。
ただし硝酸イソソルビドとニトログリセリンは同じような効果を期待して使用されますが、同じ成分では、ありません。
以上のような使い方をする薬ですが、大変な間違いをこの女性はしていました。
狭心症発作は、いつ起こるか分かりません。この硝酸イソソルビドの錠剤は、いつでも使えるようにしておかなくてはなりません。外出(散歩・買い物・旅行など)時には、財布などに入れ必ず身につけていなければならない薬です。硝酸イソソルビドは、狭心症患者のお守りであり、命綱です。それなのに、この方は後生大事に薬をすべてたんすの中に保管していたのです。
もらった頓(とん)服薬の使い方、「いつ」「どんなとき」「どのように」使用するかを必ずお医者さん、または、薬剤師に聞いてください。また服薬記録の「お薬手帳」にきちんと書いてもらいましょう。