味がしないと訴える八十代のおばあちゃん。薬が原因で嫁と不仲に?
2011年7月19日 | 健康コラム
口の中渇き味覚異常
二年ぐらい薬剤師が訪問指導に行っている八十代のおばあちゃんの話です。ある日、こんな訴えを薬剤師に言い始めました。
【おばあちゃん】
「最近、嫁が作った料理がめぐね(おいしくない)。」「くち(口)の中が渇いで、何食べてもめぐね(おいしくない)。」「渋ガキ食べた感じだ。」「鼻が詰まる…。」
【薬剤師】
「嫁さ料理めぐねってしゃべればまいねや。一生懸命作ってくれでるんだはんで。もしかしたら薬が原因かもしれねはんで、調べでみるはんで…。」(お嫁さんに料理がまずいと言えばだめですよ。一生懸命作ってくれているのですから。もしかしたら薬が原因かもしれませんので、調べてみますね)こんなやりとりがありました。薬が原因で嫁との中が悪くなっているかもしれない例です。
このおばあちゃんは、血圧が高く、心臓やおなかの調子もあまりよくない状態で、かかりつけのお医者さんは、これらの症状を治療するために全部で七種類の薬を処方しています。
薬をのんで味覚異常(味がしない、渋ガキを食べた状態)が出ることもありますので、薬剤師が薬の中で味に影響があるものを探しました。また口の中が渇く状態がずっと続くために味覚異常が出ることもあります。
おばあちゃんがのんでいる薬で、これらの疑いがあったのが、高血圧治療薬のメシル酸ドキサゾシンと塩酸ジルチアゼムACE阻害薬の塩酸イミダプリルでした。
かかりつけのお医者さんと相談し、血圧の変化や心臓の状態を考えてメシル酸ドキサゾシンを塩酸マニジピンに替えました。
メシル酸トキサゾシンが口の中を渇いた状態にしていたと考えられます。替えて二週間で口の中がだ液で潤ってきたというのです。
おばあちゃんは「あめっこなめるのも減ったや。」(あめをなめることも減りました)と言いました。口の中が渇くのであめ玉をなめていたのです。四個から五個もなめていたのが半分に減ったそうです。味も前よりはいいみたいということです。ほかに二種類を別な薬に替えることも検討中です。
繰り返しますが、口の中が渇く薬をずっとのんでいる場合、味が変わる、味がしなくなるということを考えてください。また、薬で味覚が変わるものもあるということを知っておいてください。
とかく高齢者の食欲が落ちるのは「年だから」と決め付けることも多いのですが、のんでいる薬を疑ってみることをお願いします。
薬が原因で家族の不和を招くことは避けたいものです。