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健康コラム

血圧を下げる薬で空せき。おばあちゃんが家族との食卓から離される。

薬変えだんらん戻る

三世代生活している患者さんの家で家族だんらん、食卓を囲んでいる風景はよく目にします。 ところがある時、この家族の八十代のおばあちゃんが、みんなの食卓から違うテーブルに移っていたのです。
薬変えだんらん戻る お嫁さんに聞いてみますと「最近、食事中でもせきをして、孫たちに汚いと言われ困ったので食卓を違うテーブルに変えた」というのです。
のんでいる血圧を下げる薬が原因ではないかと考え、早速かかりつけ医に連絡、相談をし、違うタイプの血圧を下げる薬に変更してもらいました。
もともとのんでいたレニン・アンジオテンシン系降圧剤カプトプリルは、ACE阻害薬(腎臓=じんぞう=にある血圧を上げる物質を作れなくする薬)の仲間に入るもので、特にこの仲間の血圧を下げる薬の副作用は、長期間服用していると、風邪もひいていないのに「コンコン」と空せきが出ます。
この空せきが出現するまでの服用期間は、人によって違います。数カ月で出る方もいれば、一、ニ年で出る方もいます。この薬が原因でせきが出ていたのです。
薬を変えてから、このおばあちゃんは数日後に空せきも止まり、もとの家族だんらんの食卓に戻りました。
とかく世代間のすれ違いや誤解が多いこのごろ、薬が原因でこんなふうにされたのではたまりません。 でも、お医者さんと薬剤師の連携によって、このようなケースも改善できるのです。薬をのんで、いつもと調子が違ったらお医者さんか薬剤師に相談してください。
また薬単独の副作用や薬同士、薬と食べ物、飲み物とののみ合わせをチェックしたり、同じ成分の薬が重なることの副作用などから自分を守るためには「お薬手帳」が役立ちます。薬局窓口で無料配布していますので、ぜひもらってください。そして医療機関や薬局に行ったら必ずこの「お薬手帳」を見せましょう。

お薬手帳

八十代の夫を妻が介護している患者宅での出来事。はいかいを止める薬で洗濯量が増える?

日常動作が鈍り失禁

数年前の冬期間の定時訪問で、昼にお邪魔した患者さん宅での出来事です。奥さんの目が赤くなっているのに気付き「どうしたの」と声をかけました。
日常動作が鈍り失禁 「うちのじっちゃ、夜中に雪のなが走り回って、ついで歩いでだきゃ、寝れねぐなって、なも寝でね」(うちのおじいちゃん、夜中に雪の中を走り回って、ついて歩いていたら寝れなくなって、何も寝ていない)
つまり夫の夜中のはいかいを見守り寝不足で目が真っ赤になっていたのです。すぐ主治医に報告し、はいかいを抑える薬を処方してもらいました。塩酸チアプリド50mg一錠を一日三回のむように、という指示でした。一週間後に様子をうかがったら、はいかいは止まったけれども、今度は洗濯が多くなって大変だと言うのです。
よくよく聞いてみますと、トイレが間に合わなくなっていました。トイレまでは自分で行っているのですがズボンを下げる途中で便や尿が出てしまうのです。
これは明らかに、はいかいを止める塩酸チアプリドの量が多いため、本人の日常動作が鈍くなるのが原因と思い、再度、医師に相談しました。その結果、塩酸チアプリドを一日三回から二回か一回に減らすよう指示がありました。
奥さんにもう一度、薬の作用を十分話し納得していただき、一日二回、朝と夕方に服用するように変えました。この結果、はいかいは止まりトイレも間に合うようになって、さらに「洗濯量も通常の量に戻りました」。もちろん、奥さんの睡眠も確保されるようになりました。
のんでいる薬は、目的の効果が出ているようですが、たまたまこの患者さんには、投与量が多かったため動作が鈍くなり日常生活に支障が出てしまった例です。

手が震えて目薬をうまくさせず、1回にたくさん使うおばあちゃん

症状に応じ使い分け

症状に応じ使い分け 薬剤師の訪問指導の現場で、おばあちゃんが言いました。「目薬、すぐねぐなってしまうんだいな。一週間に二本ねば足りね。」(目薬、すぐなくなってしまうんですよね。一週間に二本ないと足りません)
【薬剤師】「一週間に一本で普通足りるでしょう?」
【おばあちゃん】
「手震えで、なづぎや、ほぺたさ、落ちでちゃんと目さ入んねんだいな。したはんで、いっぱい使ってしまうんだや。」(手が震えて、おでこや、ほっぺたに、落ちてしまいちゃんと目に入らないんですよ。だからいっぱい使ってしまうんです。)
【薬剤師】
「ちゃんとさすのにいいもの持ってきてあげる。」
お年を召しますと手が震えて点眼薬をうまくさせないで困っているケースが散見されます。
そして治療効果がうまく出ないというのです。
お助け道具 そこで「お助け器具」登場です。その器具は、プラスチック製で直径4センチぐらのおちょこの形をしていて、真ん中が目薬の容器をさし込むように穴があいています。その穴に目薬をさし込み、容器ごと目の上に置いて点眼薬の胴体部分を押すと、一発で命中できます。
この器具をおばあちゃんに使ってもらってからは、きちんと一週間に一本のペースで使えるようになりました。
もちろん目の調子もよくなりました。また、無駄な目薬の使い方がなくなり医療保険の無駄の解消にも貢献してます。

あらためて正しい点眼薬の使い方を説明します。
まず穴をあけるタイプの容器は、穴があいているか確認を。穴のあいていない場合は、キャップを右にひねると穴があおきます。
次に、点眼薬の容器の先がまつげや目に直接触れないように、一滴、二滴とお医者さんに指示された量(滴数)をさします。目頭を押さえて、まばたきをしないでジーッと一分待ちます。二種類の点眼薬を使う場合は、五分くらい間隔をあけるのが効果的です。
保管は、目薬をもらったときオレンジ色やこげ茶色のビニールの袋に入っているものは、光に弱い点眼薬です。できれば家では、冷蔵庫など冷暗所での保管が最適です。冷たい方が「なづき」(おでこ)や「ほぺた」(ほっぺた)に外れても分かりますし、目に入ったときもそう快です。 手が震える場合は、補助器具をつかって快適に目薬を使ってください。補助器具など詳しいことは薬剤師に相談してください。

心臓病用のはり薬(テープ剤)を健康な奥さんにプレゼント。同じ痛み止めでも…。

症状に応じ使い分け

高齢者の夫婦で往診を受けている家でのことです。薬剤師が訪問指導に訪ねると、奥さんが真っ赤な顔して具合悪そうにしていました。
【薬剤師】「どうしたの?」
【奥さん】
症状に応じ使い分け「父さんさ、もらったはり薬を張ったら、顔ほでって、あんべ悪ぐで…。」(父さんにもらったはり薬を張ったら、顔がほてって具合が悪くて…。)
事情を詳しく聞いたところ、奥さんにはもともと消炎鎮痛剤のはり薬が出ており、それを使い切ってしまったため、痛みが出てはだめだと心配しただんなさんが、親切にも「わのけらね。」(私のをあげます)と、自分の心臓病用はり薬をプレゼントしたのです。
だんなさんからもらった薬は、冠動脈拡張剤硝酸イソソルビドが入ったはり薬(テープ剤)です。それを奥さんは、使ってしまったのです。
奥さんに出ていたはり薬は、胃の痛みをとるための消炎鎮痛剤入りテープでした。

夫婦の仲がいいことでは問題ありません。うらやましい限りです。しかし、薬の使い方については問題が二つありました。
このテープが入っている包装が、どちらも銀紙で見た目は、同じに見えるのです。よく見ると片方は、心臓病用はり薬、もう一方は、消炎鎮痛剤と書かれています。
先入観でだんなさんは、銀色の袋に入ったものだからどっちも同じ「痛み止め」のテープ剤と理解しており、こんなことになってしまったのです。テープそのもので似ていると言えば似ています。 もう一つの問題は、他人に薬をあげるということです。患者さん一人ひとりのためにお医者さんは、薬の種類、量を決めているのです。夫婦とはいえ他人です。絶対にプレゼントしてはいけません。
こんなだんなさんの思いこみで奥さんは苦しい思いをしたのです。
われわれ薬剤師にも責任があります。「心臓が痛くなる」「肩が痛くなる」といった症状に対し、確かにどちらも「痛み止め」ですが、きちんと使い分けをしていることを教えていかなければならない事例でした。
最近は、いろんな症状に効果のあるはり薬(テープ剤)が出ています。見た目で判断してはいけません。どんな症状に使うのか、一日何回使用したらよいか、かぶれたときの対処法はーなどの確認を薬剤師にお願いします。

血圧を下げる薬。「最近調子がいいから」と勝手にやめてとんでもないことに。

急激に上昇し危険大

「先生、あんた言う通りだじゃ。」(先生、あなたの言う通りです)
県内のある老人クラブの勉強会で「薬と賢くつきあって長生きしよう」の話が終わったあとの一幕です。
急激に上昇し危険大 あるお年寄りが「わのけやぐ、勝手に血圧の薬やめで、アダって、あの世さいってまったじゃ。」(私の友達が勝手に血圧の薬をやめて、脳卒中であの世にいってしまいました)というのです。その友人は、血圧の調子がよくなったからといって、勝手に薬をやめており、訪問指導に来た保健婦さんに話をしたところ「ちゃんとのまないとだめ。」と注意された翌日の出来事だったというのです。「ホント、血圧の薬、勝手にやめれば危ねもんだって分かったじゃ。」(本当、血圧の薬を勝手にやめれば危ないものだと分かりました)
血圧の薬は、のんでいるから血圧が安定しているのです。のむことを忘れたり、やめたりしたら、急激に血圧が上がって血管が破れて脳出血になることもあります。命にかかわることですから、勝手にやめてはいけません。
血圧の薬をのんでいる皆さんは、毎日のことなので、のみ続けていることで調子がいいということを、忘れがちなのでしょうか。
また、こんなこともありました。昼前に薬局窓口である主婦が「血圧上がってまったじゃ。起ぎでから、家族に、ご飯食べさせたり、洗濯したりで、朝ご飯、食べでねはんで、薬、のめばまいねと思って…。」(血圧が上がってしまいました。起きてから家族にご飯を食べさせたり、洗濯したりで朝ご飯を食べていないので薬を飲めばだめと思って…)
つまり、朝ご飯食べていないので薬をのまず、その結果、血圧が上がってしまったのです。
最近、若い人だけでなく、お年寄りでも、食事を三食とらないことが多くなりました。
その結果、薬は食後にのむものと頭にあるので、食事を取らないと、薬をのまないことも多くなっています。
薬は、のまなければ効果が出ません。特に血圧を下げる薬を勝手に途中でやめることは非常に危険です。
血圧をさげる薬の場合は、ご飯を食べていなくても決められた時間にきちんとのみましょう。また、のみ忘れたらいつのめばいいかも薬剤師に確認しておきましょう。
服薬記録の「お薬手帳:には、こうした注意事項もきちんと書いてもらいましょう。
血圧を下げる薬とは、仲良く付き合って、いつまでも健康で長生きしてください。

薬ののみ合わせで、子供がぐったり。こん睡状態に陥ってしまった。

相性や分量で中毒症状

薬局窓口で耳鼻科の処方せんを持ってきたお母さんとのやりとりです。
【薬剤師】
「どうしましたか。他の病院の薬のんでいませんか」
【お母さん】
「鼻水が出て、たんが詰まり、せきも出ているんです。小児科から抗生物質とせきがひどいときにのむように言われた薬をもらっています」と言って薬の名前を書いたメモを出しました。
【薬剤師】
「今日は、小児科の薬とダブらないように、たんを切る薬で、小児科と違うタイプのせき止めが出ています。小児科の薬と一緒にのませてください」
【お母さん】
「あのー、小児科の薬でせきがひどいときにのみなさいと言われた薬をのませると、子供がぐったりして眠ってなかなか起きないんです。どうしたらいいでしょう。」
【薬剤師】
「あれ、もしかしたら薬ののみ合わせでそうなっているかもしれません。調べてみますね。」
相性や分量で中毒症状 調べた結果、マクロライド系抗生物質エリスロマイシンと、キサンチン系気管支拡張薬チオフィリンの組み合わせが原因でした。
この場合、テオフィリンの中毒症状が出て「ぐったりして眠ったまま」が続いたと考えられます。

薬剤師は、テオフィリンをのませるのをやめるようにアドバイスしました。
また、このようになっていることおを小児科の先生にきちんと話すことも約束しました。
この結果、上記のような状態はなくなったと後日お母さんから「ありがとうございました」とお礼の電話がありました。
どうしてこうなったか解説しましょう。
エリスロマイシンによって肝薬物代謝酵素(解毒酵素)が邪魔され、テオフィリンの血中濃度が上昇してしまったのです。
このテオフィリンは、気管支をひろげるちょうどよい濃度と、中毒症状が出る濃度が接近していて、さらに個人差も大きいため、血中濃度を測って、その人に合った投与量を設計しなければなりません。
今回のケースはたまたま中毒症状が出る量になってしまっていたようです。
お互いの量を調整するお医者さんもいますが、テオフィリンを使っている方で中毒症状が出る量だと悪心(おしん)、おう吐、動悸(どうき)、手足が震える、意識障害、こん睡などの症状が出ます。
このような症状が出たら、すぐ、かかりつけのお医者さんか薬剤師に相談してください。薬の量の調整が悪いと、のみ合わせによって、こんなことも起こります。服薬記録の「お薬手帳」には、今のんでいる薬と相性が悪い薬のことや、のみ合わせによる注意事項などを書いてもらいましょう。

冷蔵庫の中を開けると坐薬がいっぱい。だれにどれだけ使うのか分からない?

有効量、期限の確認を

皆さん、ご家庭の冷蔵庫を開けてみてください。いつもらったか、分からない坐薬がいっぱい保管されていませんか。
小さいお子さんがいるお母さんから、薬剤師に「子供に坐薬を使ったのですが、熱が下がらないんです。どうしたらいいですか」とか「だいぶ前にもらってだれの坐薬か分からない」など、電話で問い合わせがくることがあります。ほとんどのお母さんたちは、子供が突然熱を出した時のために坐薬を大事に保管してあると思います。
有効量、期限の確認を 今回は、坐薬のあれこれについてお話しします。中でも子供さんによく使われる坐薬に絞って紹介します。商品名ではなく一般名で紹介することをお断りしておきます。
「熱が出た」とか「耳が痛い」等で使われるものに、鎮痛消炎剤ジクロフェナクナトリウム坐剤があります。12.5ミリグラム、25ミリグラム、50ミリグラムと分量ごとに三種類あり、子供の場合、体重1キロ当たり0.5~1ミリグラムを使用します。回数は1日1、2回です。二回目を使うときは六時間あけてください。使う量が多すぎると、平熱より体温が低下したり、ショックを起こすこともあります。ですから高齢者や小児に投与する場合には、少量から始めます。
解熱鎮静剤のアセトアミノフェン坐剤は、50ミリグラム、100ミリグラム、200ミリグラムなど分量ごとに3種類あり、6~12歳では100~200ミリグラム、3~5歳で100ミリグラム、1~2歳で50~100ミリグラム、1歳未満で50ミリグラムを使用します。
アセトアミノフェンは、のみ薬の買い薬(かぜ薬・解熱鎮痛剤)にも含まれていることがあり、併用する場合、成分がだぶって体に多く入り過ぎることがあるので、注意が必要です。
また、坐薬イコール熱冷ましだけではありません。吐き気を止めるための消化管運動改善剤ドンペリドン坐剤や、ぜんそくの発作を止めるための強心利尿薬アミノフィリン坐剤などもあり、さまざまな症状に対応するために肛門(こうもん)に挿し入れる坐剤という剤形に薬がつくられています。
坐薬は、一つ一つ一本当たりの量が違います。たいていの坐薬は、体重で使う量が決められています。
成長が早い子供さんの場合、保管している間に、体重が増えて、有効量に足りなくなっている場合もあります。そこで「熱が下がらないんですけど」という相談もあるわけです。
坐薬をもらう時は、何に対して効くのか、体重何キロまで使えるのか、使用期限はいつまでか。薬剤師に確認してください。そして、それを薬の袋にしっかり書いてもらい、いざというときのためにとっておきましょう。使用期限が切れたものは捨ててください。正しく使うためにも、不明な点はお医者さんと薬剤師に相談してください。

味がしないと訴える八十代のおばあちゃん。薬が原因で嫁と不仲に?

口の中渇き味覚異常

二年ぐらい薬剤師が訪問指導に行っている八十代のおばあちゃんの話です。ある日、こんな訴えを薬剤師に言い始めました。
【おばあちゃん】
口の中渇き味覚異常「最近、嫁が作った料理がめぐね(おいしくない)。」「くち(口)の中が渇いで、何食べてもめぐね(おいしくない)。」「渋ガキ食べた感じだ。」「鼻が詰まる…。」
【薬剤師】
「嫁さ料理めぐねってしゃべればまいねや。一生懸命作ってくれでるんだはんで。もしかしたら薬が原因かもしれねはんで、調べでみるはんで…。」(お嫁さんに料理がまずいと言えばだめですよ。一生懸命作ってくれているのですから。もしかしたら薬が原因かもしれませんので、調べてみますね)こんなやりとりがありました。薬が原因で嫁との中が悪くなっているかもしれない例です。
このおばあちゃんは、血圧が高く、心臓やおなかの調子もあまりよくない状態で、かかりつけのお医者さんは、これらの症状を治療するために全部で七種類の薬を処方しています。
薬をのんで味覚異常(味がしない、渋ガキを食べた状態)が出ることもありますので、薬剤師が薬の中で味に影響があるものを探しました。また口の中が渇く状態がずっと続くために味覚異常が出ることもあります。
おばあちゃんがのんでいる薬で、これらの疑いがあったのが、高血圧治療薬のメシル酸ドキサゾシンと塩酸ジルチアゼムACE阻害薬の塩酸イミダプリルでした。
かかりつけのお医者さんと相談し、血圧の変化や心臓の状態を考えてメシル酸ドキサゾシンを塩酸マニジピンに替えました。
メシル酸トキサゾシンが口の中を渇いた状態にしていたと考えられます。替えて二週間で口の中がだ液で潤ってきたというのです。
おばあちゃんは「あめっこなめるのも減ったや。」(あめをなめることも減りました)と言いました。口の中が渇くのであめ玉をなめていたのです。四個から五個もなめていたのが半分に減ったそうです。味も前よりはいいみたいということです。ほかに二種類を別な薬に替えることも検討中です。 繰り返しますが、口の中が渇く薬をずっとのんでいる場合、味が変わる、味がしなくなるということを考えてください。また、薬で味覚が変わるものもあるということを知っておいてください。
とかく高齢者の食欲が落ちるのは「年だから」と決め付けることも多いのですが、のんでいる薬を疑ってみることをお願いします。
薬が原因で家族の不和を招くことは避けたいものです。

昨日は皮膚科で今日は耳鼻科…。アレルギーが原因の掛け持ち受診で薬をもらう時の注意は?

「眠くなる」成分が重複

よく薬局の窓口で、お母さんたちから「昨日は皮膚科で、今日は耳鼻科。」、または「小児科とも掛け持ち、季節によっては眼科も行かなきゃ。」なんて、大変な状況を聞きます。
アレルギーが原因で皮膚科、耳鼻科、小児科、眼科の掛け持ち受診をされる患者さんが、お薬をもらう時の注意の話です。
「眠くなる」成分が重複 人間の体は、抗原(ダニなど)が体に入るとアレルギー反応を起こし、いろいろな症状が出ます。人によって体から出る警告サインが違います。症状が出る人と出ない人もいます。
代表的な症状は
1.せきが出る(気管支ぜんそく)
2.鼻水・鼻づまり(アレルギー性鼻炎)
3.皮膚がかゆい(アトピー性皮膚炎)
4.目がかゆい
などが挙げられます。これが季節によって出る人と一年中出ている人とがいます。抗原によって違うのです。
抗原にもいろいろありますが、代表的なものを挙げます。
季節性で有名なのは、花粉症の原因の花粉です。春はスギ、ヒノキ、夏にかけスズメノテッポー、カモガヤ、秋にはヨモギ、ブタクサの花粉が原因でアレルギー症状が出ます。
通年型では、ハウスダスト、ダニ、ペットの毛など一年中体の中に入りやすいものが原因でアレルギー症状が出ています。
アレルギー症状が出るあなたの抗原を、かかりつけのお医者さんに調べてもらい、この抗原が体に入らないよう工夫しましょう。
気管支ぜんそく、アレルギー性鼻炎、アトビー性皮膚炎の治療には、さまざまな薬が使われますが、共通しているのは、アレルギー性疾患治療剤のペミロラストカリウム、オキサトミド、フマル酸ケトチフェン、トラニラスト、塩酸アゼラスチンなど、抗ヒスタミン剤のフマル酸クレマスチン、マレイン酸クロルフェニラミンなど、抗アレルギー剤の塩酸シプロヘプタジンなどが使われます。
アレルギー性疾患治療剤は、治療には大切な薬ですが気管支拡張剤、ステロイド剤、抗ヒスタミン剤等と違い、すでに起こっている症状や発作を速やかに軽減する薬ではないので、このことを十分理解して使ってください。速やかに症状を軽減するための併用薬もきちんと使ってください。
アレルギー疾患治療剤、抗ヒスタミン剤などは眠くなる薬が多いのが特徴です。複数の病院を掛け持ちすることが多いアレルギーの病気の人や、お子さんがそのような状態の場合は、眠くなる薬が重なる確率がさらに高くなります。
自分の服薬記録の「お薬手帳」を持つことで、今のんでいるすべての薬をきちんと管理できます。薬剤師に、のむ時の注意事項を書いてもらいましょう。
仕事中や幼稚園、学校で眠くて我慢できないーなんてことを避けたいものです。

自分がのんでいる薬を娘にプレゼント。娘は血圧が下がり過ぎ倒れてしまった話。

1人ひとり違う処方。

 普段から往診を受けている七十歳のおばあちゃん。血圧が高く、足がむくみやすい体質で薬を三種類もらっていました。そのうちの一つは先生からの直接の説明で「水分を出す薬」と毎回言われており、しっかりのんでとても調子がよい状態でした。
 ある時、立ち仕事をしていた娘の足がむくんでしまいました。その状態を見たおばあちゃんは、自分と同じ症状だと思って娘に自分がのんでいる「水分を出す薬」をプレゼントしてのませてしまったのです。
 娘は、血圧が下がりすぎ倒れてしまいました。その後おばあちゃんは、娘が倒れたのを見て「この薬、強い薬だっきゃ、のみだぐねじゃ。」(この薬、強い薬ですよね、のみたくないです。)と言って、のむのをやめてしまいました。
 この結果、むくみは取れない、血圧はガタガタ。おばあちゃん自身が素人判断でやったことで招いた事態の上、自分に対しても「強い薬」と思ってしまった結果、症状悪化に至ったことになります。何が問題かを考えてみましょう。
 原因になった薬は降圧利尿剤プロセミドです。おしっこを出してむくみを取ったり、血圧も下げる薬です。
娘に合う薬はまた別なんだね。  今回の問題点は、いわずもがな、自分でもらった薬を自分の症状と同じということで他人にプレゼントすることです。
 この薬は普段、血圧が正常な人には、必要のない薬です。急激な血圧の低下など「むくみを取る」目的以外の効果もあるのです。
 お医者さんは、患者さんを診断し「薬が必要」になれば、その患者さんの体質、年齢、体重、肝臓・腎臓(じんぞう)の機能などをすべて考慮し、薬の種類、量、のむ回数、使う回数を決めています。一人ひとりオーダーメードなのです。
 もらった薬でお医者さんや薬剤師から説明のあった効果以外の効果を持つ薬はたくさんあります。最近は、もらった薬のすべての効能が書かれた「情報提供書」を患者さんたちに説明補足で渡している薬局が多くなっています。
どうか、素人判断で「この薬っこ、効ぐはんで、なさ、けらね。」(この薬は効くからあなたにあげます)はやめてください。

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